冬季に多発する温度差で起こるヒートショック
暦の上では立春を迎える2月。とはいえまだまだ真冬日を記録することもある、寒さ厳しい季節です。このような時季に気をつけたいのが「ヒートショック」
ヒートショックとは、温度の急激な変化で血圧が大きく変動し心臓に負担がかかり、失神を起こしたり、心筋梗塞や脳卒中を起こす原因の一つです。
浴室だけではなく、トイレや洗面所などでもヒートショックが起こりますので注意が必要です。
【ヒートショックの危険性が高い方】
・65歳以上の方
・高血圧・糖尿病や脂質異常症等の病気がある方
【冬季は浴室内での不慮の溺死・溺水が多い】
高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水は冬季に多く発生しており、原因の一つにヒートショックがあげられます。
こんな人は特にご注意を!
家庭の浴槽で溺れて亡くなる人の数は、2004年には2,870人であったのに対し、2015年には4,804人となり、およそ10年で約1.7倍に増加しています。そして、このうちの約9割を65歳以上の高齢者が占めています。
高齢になると血圧の変動が生じやすくなり、体温を維持する機能も低下するため、ヒートショックの影響を受けやすいと考えられることから、65歳以上の人は特に注意が必要です。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化リスクがある人、肥満や睡眠時無呼吸症候群、不整脈がある人も、ヒートショックの影響を受けやすいため、ぜひ意識して対策を心がけましょう。
【入浴中のヒートショックを防ぐために】
(お風呂)
(1) 入浴前に脱衣場と浴室を暖める
冷え込みやすい脱衣所や浴室を暖房器具で暖めることが効果的です。
また、暖房機器がない場合には、浴室内の壁に温水シャワーをかけるなどして温度と湿度をあげましょう。
(2) 湯温は41度以下、浴槽につかる時間は10分以内に
熱すぎる湯に長時間つかると血圧の変動が大きくなります。
ヒートショックの危険性が高い方は、半身浴がおすすめです。
(3) ゆっくりとお風呂から出る
入浴中は水圧が身体にかかっています。急に立ち上がることで圧迫されていた血管が拡張し、脳血流量が低下してしまい、貧血状態となる危険性があります。浴槽から出る際には、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。
(4) 飲酒後、食後すぐの入浴は避ける
食後1時間以内や飲酒時は、血圧が下がりやすくなるため入浴を控えましょう。
(5) お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける
家族がお風呂に入っていることを知らず、入浴中の体調悪化に気づかないケースがあります。また、高齢者がいる家族は入浴中に声掛けをするなどの気配りも必要です。
(トイレ)
(1) 暖房器具を設置する
トイレは、暖房器具がなく寒い空間であることが多いので注意が必要です。
(2) いきみすぎないように注意
排便の際にいきみすぎると、心臓への負担が重くなってしまうので要注意。
寒暖差の対策に加えて、普段からの便秘対策も重要です。
(3) トイレの近くに寝室を
寒い廊下を経てトイレに行くだけでも、心臓に負担がかかります。
可能であれば、寝室はトイレに近い部屋に設定しましょう。
【屋内全体で考えるヒートショック対策】
国土交通省はヒートショックを防ぐための住宅環境として、次のような温度条件を紹介しています。住まいのなかで寒さや温度差が気になる場所があれば、この値を参考に改善をはかるのもよい対策です。
- 部屋の温度:15℃以上、28℃以下に保たれている
- 洗面所、浴室、トイレの温度:冬季で20℃以上
暖房器具の適所への配置や市販の断熱・防寒対策グッズの活用、家屋の断熱改修など、屋内の温度差を緩和するための方法は様々あります。ご自身の住まいに合った方法を上手に取り入れて、まだまだ寒さの厳しい2月を元気に乗り切りたいですね。